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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁
たいこや仲居大供までキャッキャッとなってあばきあった――。なるほど、これなら女のお客にしても、たしかにもてるに違いない。
さはあれ、このお嬢様、べつに女紀文を気どる次第でもなく、厭味な所もさらさらない。ただこうした色彩の雰囲気につつまれているのがわけもなく面白いのであるらしい。
と、何思ったか「姐さん――」と茶店の女を手招きして、お嬢様はこうおっしゃる。
「あの、あすこに灘の樽がみえるようだが、ちょっと一本つけてちょうだいな……いいえ、肴はべつにいらないよ、あるなら枝豆か新生姜でも……」
一方では舞妓たちが藤棚の下へ床几をもちこみ、銀のかんざし花櫛のきれい首をあつめて、和蘭陀カルタをやりはじめていた。
お嬢様なるあやしい女、それは見返りお綱であった。――お綱が江戸への帰り途である。
天王寺で掏りとった三百両や、和蘭陀カルタで思いがけなく勝ちぬいた金、合せて七百両あまりを、伏見や京都で男のような遊びぶりにつかいちらし、まず上方を見物したし、重たい金の荷もとれたし、これでサッパリ帰ろうというのである。
そこで、京の芸子や仲居たちは、江戸蔵前の大通のお嬢様が、いよいよお立ちというので、走井の茶屋まで見送ってきたものである。