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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《鳴門秘帖(一)(なるとひちょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 262,100 字 · 523 頁

青空文庫

「こウ、姐さん」

すぐ蠅のようなやつが二匹、一匹は空棒を通して駕をひッかつぎ、一匹は手ぶらで後からくッついてくる。

「どうだい、ええ、姐さんてば」

お綱はふり向きもしないで、団扇を使いながら歩いていたが、

「うるさい人だね!」チェッと舌うちをして睨みつけた。

「うるさかったら乗ってくンねえ。陽のあるうちに矢走の渡船を越えて、草津泊りは楽なもんでさ。下駄ばきでカラコンカラコンやっていた日には、これから大津までもむずかしゅうがすぜ」

「大きなお世話だよ」

「こいつアごあいさつ。親切に教えてやっているんじゃねえか」

「雲助とゴマの蠅の親切なんかは、まッぴらご免ですとさ。それとも、まったく親切気があるなら、これから江戸の日本橋まで、押ッとおしでやってくれるかい」

「ええ、ようがすとも、泊りさえ取ってくれれば、江戸だろうが、奥州だろうが、決して嫌たアいいません」

「そうかい、だがね」

「まアとにかく、先へ乗っておくンなさい」

「無代でだよ」

「えっ?」

「こう見えても私は一文なし、タダでいいなら乗ってあげる」

澄まして行き過ぎるうしろ姿に、いっそうムッとした二人の雲助、いきなり空駕をほうりだして、バラバラッと腕まくりのただ一打ち!