Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
さんごくし
三国志
吉川 英治
Read 三国志 (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 161,356 characters · 323 screens
冀州城内の獄中に監せられていた田豊は、官渡の大敗を聞いて沈吟、食もとらなかった。
彼に心服している典獄の奉行が、ひそかに獄窓を訪れてなぐさめた。
「今度という今度こそ、袁大将軍にも、あなたのご忠諫がよく分ったでしょう。ご帰国のうえは、きっとあなたに謝して、以後、重用遊ばすでしょう」
すると田豊は顔を振って、
「否とよ君。それは常識の解釈というもの。よく忠臣の言を入れ、奸臣の讒をみやぶるほどなご主君なら、こんな大敗は求めない。おそらく田豊の死は近きにあろう」
「まさか、そんなことは……」と、典獄もいっていたが、果たして、袁紹が帰国すると即日、一使がきて、
「獄人に剣を賜う」と、自刃を迫った。
典獄は、田豊の先見に驚きもし、また深く悲しんで、別れの酒肴を、彼に供えた。
田豊は自若として獄を出、莚に坐って一杯の酒を酌み、
「およそ士たるものが、この天地に生れて、仕える主を過つことは、それ自体すでに自己の不明というほかはない。この期に至って、なんの女々しい繰言を吐かんや」
と、剣を受けて、みずから自分の首に加えて伏した。黒血大地をさらに晦うし、冀州の空、星は妖しく赤かった。