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さんごくし
三国志
吉川 英治
Read 三国志 (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 161,356 characters · 323 screens
檀渓を跳ぶ
一
いざ新野へご出陣を」
と、云ったが、劉表はかぶりを振って、
「詩などは、戯れに作ることもある。もう少し彼の様子を見てからでも……」
と、そのまま城中へ戻ってしまった。
檀渓を跳ぶ
一
蔡瑁と蔡夫人の調略は、その後もやまなかった。一度の失敗は、却ってそれをつのらせた傾きさえある。
「どうしても、玄徳を除かなければ――」と、躍起になって考えた。
けれども肝腎な劉表がそれを許さない。同じ漢室の裔ではあるし、親族にもあたる玄徳を殺したら、天下に外聞が悪いというのである。
まだ、口には出さないが、そのため、継嗣の争いや閨閥の内輪事が、世間へもれることも極力さけようと努めているらしい。総じて、彼の方針は、事勿れ主義をもって第一としていた。
蔡夫人は、良人のそうした態度にじりじりして、兄の蔡瑁に、事を急ぐことしきりだった。閨門と食客とは、いつも不和をかもすにきまったものだが、彼女が玄徳を忌み嫌うことは、実に執拗であった。
「まあ、おまかせあれ」
蔡瑁は、彼女をなだめて、しきりと機を測っていたらしかったが、或る時、劉表にまみえて、謹んで献言した。
「近年は五穀よく熟して、豊作が続いています。