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さんごくし
三国志
吉川 英治
Read 三国志 (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 161,356 characters · 323 screens
五
「誰彼と仰せあるより、それがしが史渙を連れて行ってきましょう」
徐晃は、その役を買って出た。
壮なりとして、曹操はゆるしたけれど、敵地に深く入りこむことなので、徐晃の先手二千人のあとへ、さらに、張遼と許※(「ころもへん+睹のつくり」、第3水準1-91-82)の二将に五千余騎を授けて立たせた。
その夜。
河北の兵糧奉行たる韓猛は、数千輛の穀車や牛馬に鞭を加えて、山間の道を蜿蜒と進んできたが、突然、四山の谷間から、鬨の声が起ったので、
「さては?」と、急に防戦のそなえをしたが、足場はわるし道は暗いし、牛馬は暴れだすし、まだ敵を見ぬうちから大混乱を起していた。
徐晃の奇襲隊は、用意の硫黄や焔硝を投げつけ、敵の糧車へ、八方から火をつけた。
火牛は吠え、火馬は躍り、真っ赤な谷底に、人間は戦い合っていた。
五
真夜中に、西北の空が、真っ赤に焦けだしたので、袁紹は陣外に立ち、
「何事だろう?」と、疑っていた。
そこへ韓猛の部下がぞくぞく逃げ返ってきて、
「兵糧を焼かれました」と告げたから袁紹は落胆もしたし、韓猛の敗退を、
「腑がいなき奴」と憤った。
「張やある! 高覧も来れ」