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さんごくし

三国志

吉川 英治

Read 三国志 (さんごくし) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 161,356 characters · 323 screens

Aozora Bunko

三

――が、紛々と私議論争されていた。

袁煕、袁尚の二名は、その後、遼東へ奔って、太守公孫康の勢力をたのみ、またまた、禍いの兆しが見えたからである。

「捨てておいても大事ない。やがて近いうちに、公孫康から、袁兄弟の首を送ってくるだろう」

曹操は今度に限ってひどく落着きこんでいた。

三

逃亡から逃亡へ、今は身のおき所もなく、遼東へ頼ってきた袁煕、袁尚の兄弟に対して、太守公孫康は、

「扶けたがいいか、いっそ、殺すべきだろうか」を、今なお迷っていた。

――というのは、一族の者から、扶ける必要はないと、異論が出たからである。

「彼らの父袁紹が在世中には、つねにこの遼東を攻略せんと計っていたものである。しかし実現に至らぬうち、自分が敗れ去ったのだ。怨みこそあれ恩顧はない」

そして、なおこう極言する者もあった。

「――鳩は、鵲の巣を借りて、いつのまにか鵲を追って巣を自分の物にしてしまう。亡父の遺志を思い出して、袁兄弟も、後には鳩に化けないこともない。むしろこの際、彼らの首を曹操へ送ってやれば、曹操は遼東を攻める口実を失い、遼東もこのまま安泰なるばかりでなく、翻然、ご当家を重んじないわけにゆかなくなる」