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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,229 characters · 389 screens
「お美夜という女の子は、いるかの」
ちょうどあがり框に膝ッ小僧をかかえていたチョビ安が、
「お美夜ちゃんは、日光へ行っていねえや。おめえは誰だい。人の家にへえって来るなら、かぶりものを取んなよ」
覆面の侍は、そう言うチョビ安を無視して、
「なに、日光へ行ったと? それは弱ったな、約束があって来たのじゃが」
その声を聞きつけた泰軒、大の字なりに寝そべっていたのが、おきあがって、土間へ首をのばし、
「おお! 貴公は、南町の……」
「シッ! 泰軒坊主ではないか。イヤ、おぬしがここにおることは、あのお美夜と申す女の子が、おぬしの命令でかの壺を、拙者のもとへ届けに来てくれたとき、聞いたのじゃが、まだこの家に居候とは知らなかった。どうした、相変わらず飲っておるな。ところで、あの壺は偽のこけ猿…にせ猿じゃったよ」
と、唖然としている泰軒先生とチョビ安を前に、その小ぶとりの武士は、土間に立ったままつづけて、
「イヤ、それとこれとは、別な話じゃが、そのとき、あのお美夜に、なんぞ褒美を取らしょうかとわしがたずねたところが――」
「うむ、その話は、この泰軒も聞いたぞ。お美夜坊は、何も褒美はいらぬが、家にいるチョビ安という者の親が知れるよう、お奉行の――イヤなに、貴公の手で、その親を探してもらいたいと頼んだという……ここにおるのが、すなわち