Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

たんげさぜん

丹下左膳

林 不忘

Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,229 characters · 389 screens

Aozora Bunko

三

言いようもない心細さのうちに日は容赦なくたつ。同時に、眼に見えない人がきはぐるりと幾重にも、その監禁の家をとり巻いて――。

と、今宵。

その眼に見えない牢格子の扉が、ギイッと音なき音をたててあいたのです。

「サ、お美夜や、もうこうなったら助かりようはありません。たとえどんなことになろうと、あたしとお前は、母と娘として、いつまでも離れないように、一つ壁の中へ塗りこめられるのだから、せめてはそれを喜びにして、いっしょに死んでおくれ、ねえお美夜」

母と娘のきずなをそのままに、人柱として永遠に残ることが、お蓮様には、かえってこのうえもない満足。

人間、死を覚悟すると、すぐあとに幸福感がつづく。

お美夜ちゃんとお蓮様は、手をとり合ったまま、護摩堂の中へ連れこまれたのだったが。

このとき! 十重二十重にとり巻く警護の武士が、ドッ! とどよめきだったかと思うと、左膳の濡れ燕が闇にひらめいて!

源三郎にしてみれば、この造営を受け持っているのは兄の対馬守。やいばをふるってたち向かっては、同じ家中の者どもを手にかけねばならぬ。

といって、あわれな母娘が人柱などという、荒唐無稽な迷信の犠牲にならんとしているのを、黙視するには忍びない。