Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Read 剣難女難 (けんなんじょなん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 243,807 characters · 482 screens
三
「うるさい奴じゃ、何者か名を申さぬうちは開門ならん」
「足軽、秋山大助でござる……」
「秋山大助、また飲んだくれて帰りおったか」
口叱言を呟きながら、潜り門をギイーと開けた。
三
横にかぶった竹の子笠、肩に掛けたばかりの合羽姿を、よくも見ないで、門番は例の呑んだくれな足軽かと苦笑して通してしまった。
春日新九郎は、してやったりと心の裡で欣びながら、ツウと門内へ入ってしまうと、さすがに京極家の中屋敷、一町を縮めたような広さである。
右手に続いた墨塗羽目の建物は、表役人の詰部屋と見えて、金網窓には灯もさしていない。その腰壁の下を悠々と通って、ややしばらく行くと中門、そこでまた手間どる狂言は面倒と、隙を見て傍の楓の木から、ひらりと築地塀をおどり越え、奥庭深く入り込んだ。向うを見ると、雪の間、青嵐の間、秋錦の間、小さな燭が晃々とかがやいて、今しも、酒宴の終ったところか、鉤の手の廻廊を退がって来る侍の影が点々とお錠口へ流れてくる。
植込の中を匍って、あっちこっちの様子を見てきた新九郎は、橋廊下の下を潜って退り所の前近くまで来ると、そこは御殿から酔いつぶれて帰る侍達が大分な混雑。