Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
けんなんじょなん
剣難女難
吉川 英治
Read 剣難女難 (けんなんじょなん) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 243,807 characters · 482 screens
三
故郷を出奔してから、思わぬ遭難で真剣の滅茶振りはやったが、尋常に木剣をとって、剣道らしい法式を試みるのは今日が実に処女試合であるのだ。
鮠突きの槍術と、初めて木剣を持った新九郎との処女試合は、これこそ奇観でなければならぬ。
三
「エーイッ」
と新九郎はまず臍下丹田から気合をしぼって、木剣を片手青眼に持った。と云っても、具眼の者から見たら、すこぶる怪しいというより乱暴な構えであったに過ぎない。
新九郎も、最初に試みた気合が、自身でも何となく空虚な、響きのない気がしてならなかったので、更にえいッ、えいッと二、三つづけて汗ばむまでふりしぼった上、片手の木剣を伸びるだけ伸ばしてじっとその尖へ眼をつけた。
儀助は稽古槍の石突を右の後ろへ深くしごいて、左は軽く、本物の槍にすれば千段の先辺りまで穂短かに持ち、一足退って新九郎の鳩尾を狙ったが、青眼の木剣が伸びてくるので、だんだんに穂を上げて真眉間へぴたりとつけた。
同時に新九郎も、木剣の尖をジリジリ上へ上げて行った。彼は儀助の早突きの微妙をすっかり呑みこんでいるので、最初の一本突きさえ外せば、かならず勝てるという自信を持っていた。