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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
小太郎が、入口に立って
「出ろっ」
と、叫ぶと、別の声で
「出てやろう。へへ、お主ゃあ、俺を見忘れたか。手首を、折られの与三郎だあ」
口で、おどけながら、凄い目をして、両手を懐に、木屑、材木の積んであるところから立上ったのは、掏摸の庄吉であった。
「うぬは、おれの仕事を叩っき折りゃがったが、うぬも、明日から日干しの蛙だ。はいつくばって、ぎゃあと鳴け。頭から、小便ぐれえ引っかけてやらあ」
「何っ」
「何は、難波の船饅頭」
庄吉は、ぺろりと舌を出して、眼を剥いた。小太郎は、憤怒に逆上した。
「たわけっ」
下駄のまま、板敷へ、どんと、片脚踏み込んで、側の木片を握った時
「小太郎っ」
障子が開いて、小藤次が、次の間から板の間へ飛び降りた。小太郎は、木片をもったまま
「不埓なっ、通るを見かけての罵詈雑言、勘弁ならぬ――」
「馬鹿っ」
一人の職人が、木片を、かちんと叩いて
「東西東西、この場の模様は、いかがに相成りまするか」
「えへん」
一人が、空咳をした時、小太郎は後方に人の動きを感じた。振向くか、向かぬかに、跳りかかる一人の男と、その手に閃く棒とを見た。その瞬間、小太郎は、反射的に、身体を伏せたし、小太郎の手は、平素の修練で、咄嗟に、延びていた。