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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
わしの顔を見ると、すぐ、走り出したので、追っかけたが、暗いのでのう」
人々は、心の底から、動揺しかけた。
(何うして、ここを嗅ぎつけたか)
十二三人の同志だけでは、大勢の、上席の人々を対手に、何う争えるか?
(もう、ここまで、手を廻して)
心細さを感じると共に、憎しみを感じたが、その代り、張合が強くなっても来た。
人々の去った静かな――だが、乱雑な、広間で、三人が、火鉢をかこんでいた。女中は、つつましく他の部屋を取片付けながら、小太郎を、ちらっと、眺めては、笑ったり、背をぶち合ったり、していた。
「女中、そっちの女中」
と、益満が呼んだ。
「はい」
と、答えて、微かに、赤らみながら
「お召しで、ござりますか」
女中のついた手を、いきなり、小太郎の手にくっつけて
「どうじゃ、いくらくれる?」
女中も、小太郎も赤くなった。女中が、走り去ると
「とにかく、江戸は、斉興公贔屓が多い。これでは仕事が出来ん。然し、国許には、御家老の島津壱岐殿、二階堂、赤山、山一、高崎、近藤と、傑物が揃いも、揃って、斉彬公方じゃ。この人々と、連絡すれば、平や、将曹如き、へろへろ家老を倒すに、訳は無い」