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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

兵頭が、輦台の近くへ浮いて来た黒い影へ、身構えた時、池上が顔を出して、頭を振った。髪をつかんで水を切りながら

「わしは、歩いて行く」

と、兵頭を見上げて

「歩けるのう」

と、人足へ笑った。

「ええ」

「旦那っ、強うがすな」

池上の輦台人足は、走るように近づいて来て

「お乗んなすって」

と、いった。

「大勢かかりやがって、何んてざまだ。やーい、どら公、しっかりしろいっ」

人足共は、小人数の方へ味方したかった。

島田の側も、金谷の側も、磧は、人でいっぱいであった。

「強いな」

「兄弟、もう一度、行こうぜ、輦台二文って、このことだ」

「江戸へ戻って話の種だあ、九十六文、糞くらえだ」

「何うでえ、五人組は、手も、足も出ねえや。町内の五人組と同じで、お葬いか、お祝いの外にゃ、用の無え、よいよい野郎だ」

「二人の野郎あ、水の中で、刀をさし上げて、おかか、これ見や、さんまがとれた、って形だ。やあーい、さんま侍」

八郎太と、小太郎とは、微笑しながら、川を眺めていると

「おおっ、加勢だっ」

「八人立で、こいつあ、早えや」

「棒を持っているぜ」

「馬鹿野郎、ありゃあ槍だ」

「こん畜生め、穂先の無え槍があるかい。