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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「御免」
と、久光の声がした。そして、襖が、開くと、いつものように、ずかずかと入って来た。
斉彬の好みと同じ姿で、紬の着流しに、木綿の足袋、粗末な鉄鍔の脇差だけであった。将曹が、座を滑って、頭を下げたが、ちらっと見たまま、挨拶もしないで、斉興の側へ坐った。そして、すぐ
「又、密談か、将曹。貴公、密談が、すきだのう」
と、浴せた。将曹は
「いえ、今日は――」
「隠すな。近侍も、侍女もおらんでないか。正直に申せ」
と、口早にいって、すぐ、斉興に
「調所が、近々参りましょうが、二千両下されますよう」
斉興は、蒲団の上へ丸くなったまま、黙っていた。
「紡績機械を作ります」
「紡績と――申しますと」
「将曹には、判らん――母上、御祈祷について、いろいろ噂がござります。おやめになった方が、よろしゅうござりましょう、愚にもつかん迷い事を――」
三人は、黙っていた。
「いろいろ噂はあるが、私は、何も聞かぬ事にしております。将曹も、聞かさぬようにして貰いたい。時々は、兄上へ伺候して講義を聞くがよい。為になるぞ。兄は、方今、天下第一の人物じゃで、少し見倣うがよい。わしは一々、兄の真似をしておる」