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ぜにがたへいじとりものひかえ
橋の上の女 ――銭形平次傑作選2
野村 胡堂
Read 橋の上の女 ――銭形平次傑作選2 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 88,573 characters · 178 screens
「待って下さい親分。甲子松は少し馬鹿だけれど、親切な良い男です。あの人が主人なんか殺せる筈はない。――江戸には何百人も何千人も左利きがあります。現に、この家だけでも、この私も左利きなんですもの」
「何んということだ」
さすがの平次も二の句が継げませんでした。この女には、まったく叶わないと言った心持です。
「でも、隠せることじゃないんですもの、家中の者は皆んな知ってますから」
お六はそう言って蟠かまりもなく笑うのです。
「もう宜い、もういちど振り出しから賽を振って見よう」
「それが宜いでしょう。でも、私もう一つだけ教えて上げたいことがあります」
「何んだいそれは?」
「あの地蔵様へは、裏のお寺の境内から、誰でも楽に来られるということ」
お六はそう言って思わせ振りに愛嬌の良い顔を、ちょいとかしげるのです、恐ろしく不きりょうな癖に、この女には、何んとも言えぬ魅力があります。
「そうか、俺も一つ、面白い事を知ってるよ」
「?」
「地蔵様の台座の下に、大きな穴があって、その中に小判が隠してあったと――お前は言ったが、地蔵様の台座の下には、二つの穴があったのだよ、前と後ろに。