Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(三)

吉川 英治

Read 私本太平記(三) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 222,108 characters · 446 screens

Aozora Bunko

「して幾歳ぐらいの?」

「二十三、四を出てはおられますまい。いと優雅な」

「名は」

「さ、それをおたずね申しても、いっかな名も御用むきも仰っしゃいませぬ。お目にかかれば、おわかりのはずと」

さてこそと、高氏の苦りきる理性とはべつに血はひとりでに煮えくりかえった。藤夜叉だ、藤夜叉にちがいない。

このあいだ連れていたのは、まだ一ぺんも父として会ってもいないが、不知哉丸であったのだろう。おそろしいものだ肉親の血がさせる直感は。あのとき、すでにそんな気がした。

だが、ゆるしもなく、なぜこれへ来たか。高氏は腹が立つ。その激怒と咬み合う底で、また、会ってもみたいし、なつかしい。

「十郎。……ま、ここへ通せ」

「お会いなされますか」

「ウむ」

「素姓も告げぬ異な女。お耳にだけと思うておりましたが」

「ち、よけいなことを。――だまって連れて来ればいいのだ」

「はッ」

と、十郎は顔を赤くしてひき退がった。言い過ぎを悔いたのだ。で、ふたたびその女性を案内して廊口に現われても、彼は客のみあとにおいてすぐ消え去った。

女は被衣をとって遠くに白い手をつかえている。――じっと、目迎えしながら、高氏のその眼はもンどり打っていた。