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しほんたいへいき
私本太平記(三)
吉川 英治
Read 私本太平記(三) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 222,108 characters · 446 screens
四ツ目結
命松、お前も行くか」
「連れてッて下さいますか」
「むむ。先へ走って、はやく朝飯の支度でもしておきなさい」
四ツ目結
ひと晩でも、数百の兵が泊って行くとたいへんだ。教信院の僧たちも、今朝は、そのあとかたづけに、みな、てんてこ舞っている。
それもよそに。
念仏道場の片すみで、しゃあしゃあと朝飯をたべ、弁当までこさえて、命松丸の背に負わせているのを見ると、釜屋働きの婆さんは、つい黙っていられない。
「おやまア。いいご身分だこと。兼好さん、今日はお花見かね」
と、からかッたものである。
「なあに、加古川ノ宿まで用達しさ。すぐ帰るよ」
「どうだか、知れたもんじゃない。兼好さんと来たら、出かけたがさいご、いつ帰るのやら、帰らぬのやら」
「困った風来だ。まったくナ」
「じぶんでいってるから世話はないよ。ねえ命松さん。おまえも、えらい者をお師匠さんに持ったものさね。いったいこんなお師匠さんに付いて、何になるつもりだえ」
命松は、本気になって。
「くそ婆、ぶん撲るぞ」
「あれ、この寝小便たれまでが、一人前に何かいうよ。似合いのお弟子だったんだね」
「出て来い、こっちへ」
「おまえこそ、生意気をいうと、寝小便蒲団を背負わせ追ン出すからいい。