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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(七)平次女難

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 152,696 characters · 310 screens

Aozora Bunko

七

牛込見附のあたりにいるかもわかりませんから」

ガラッ八はそう言いながら使いの者と一緒に、神田から九段下に出て牛込見附へやって来ました。

八日月の薄明り、幸い人の影は五間十間離れても見当ぐらい付きます。

「親分」

ガラッ八は月の光にすかして声を掛けると、濠端の柳の幹から離れた影が、

「八か、何だ用事は」

紛れもなく平次の声です。

「大場様から、すぐ来るようにって、御使いの方が見えましたぜ」

「そうだろう」

「あれ、待っていたのかい」

「まア、ね」

平次はそう言って、何やら手に持った物を懐に入れながら近づきました。

七

通されたのは、相沢半之丞の長屋ではなく、本家の大場石見の奥座敷、といっても、庭木戸から廻って、縁側にかしこまった平次とガラッ八は、四方の様子の物々しさに、思わずギョッとしました。

庭先に番手桶、荒筵を敷いて、その上の枝ぶりの良い松に吊り上げたのは、半裸体の美女。いうまでもなく用人相沢半之丞の妾お組というのが、雁字がらめにされて、水をブッかけられたり、弓の折れで打たれたり、芝居の責めをそのままの拷問にかけられているのです。

「平次か」

縁側に立ったのは、大場石見、八千石の当主でしょう。