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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

「ヘエどうぞ」

流しの後ろ、大きな釜の横手、三助の通路から、遠く番台まで見透せるところに、お神が仕事をしていたという三畳敷があり、障子を隔てて、これも形ばかりのお勝手が付いております。

「ここにおれば、入ってきた客も、三助の様子も一と目で解るだろうね」

と平次。

「それはもう、釜前から、女湯の流しの板敷を半分と、番台から、男湯の入口まで一と目に見えます」

「お神さん、有難う。そんな事でいいだろう」

「有難うございます。親分さん」

お神は何となくホッとした様子です。

釜前の火は消えたまま、三助の丑松は一度番所に引かれましたが、疑いが晴れて、今日は帰っております。

「三助さん、災難だったね」

「ヘエ――」

これも市蔵の仲間の御用聞と思ったせいか、仏頂面をしてろくに顔も見せません。まだ若い武骨な男ですが、背の低い腕の長い格好は何となく、動物的で、不思議な精力を発散しております。

「三助さんは能登だってネ」

「そうでございますよ」

「能登では獣や鳥を取るのにはどうするんだろう。まさか、弓矢じゃあるまいね」

平次は妙なことを訊き出しました。

「鉄砲で撃つだよ」

丑松はどこまでもぶッきら棒です。