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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

五

あとは番頭の藤三郎を始め、雇人ばかり、男女取交ぜてざっと十五六人、いずれも慾は深そうですが、土蔵へ穴を開けて、千両箱を三つも盗み出すような人相のは一人もなかったのです。

「これで皆んなでしょうな」

「ヘエ――」

平次の問に、藤三郎が答える下から、

「お梅坊が居ねえよ」

と少し賢くなさそうな権助の声が突抜けます。

「何! お梅――、それは何だ」

平次は早くも聞とがめました。藤三郎が余計な事をと言ったように、目くばせをするのを見て取ったのです。

「何、何でもありゃしません。土蔵の側に寝ているくせに、何にも知らないって言う口振りが変ですから、少し痛い目をみせているだけの事でございます。強情な娘で容易の事では口を利きませんが、念のため、ここへ伴れて参りましょう」

照れ隠しともなく、そう言って土蔵の方へ行く藤三郎の後から、

「いや、私が行ってみましょう」

平次はついて行きました。

五

「あッ、これは」

さすがに平次も驚きました。土蔵のツイ側、ガラクタを入れた物置の梁に、両腕を縛った上、猿轡まで噛まされた十五六の娘が、高々と吊されているのです。

この辺は、一応見たはずの平次ですが、さすがに薄暗い梁の上までは気が付かなかったのでしょう。