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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
二
「それは惜しいことをした。ことによると、その吹矢の根に、毒が塗ってあったかも知れぬて」
「え、そんな事があるでしょうか」
又左衛門の倅又次郎、これは次男に生れて家督を相続した手堅い一方の若者、今では田代屋の用心棒と言っていいほどの男です。
「そうでもなければ、こんなに膨れるわけがない。この毒が胴に廻っては、お気の毒だが命がむつかしい。今のうちに、腕を切り落す外はあるまいと思うが、いかがでしょうな」
こう言われると、又次郎はすっかり蒼くなりましたが、父の又左衛門は武士の出というだけあって思いの外驚きません。
「それは何でもないことだ。右の腕一本あれば不自由はしない、サア」
千貫目の錘を掛けられたような腕を差出して、苦痛に歪む頬に、我慢の微笑を浮べます。
二
「ネ、親分、右の通りだ。田代屋の若旦那が銭形の親分にお願いして、親父の片腕を無くさせた相手を取っちめて下さいって、拝むように言いましたぜ」
「たかが子供の玩具の吹矢なら、洗い立てして、かえって気の毒なことになりはしないか」
銭形の平次は、容易に動く様子もありません。
「吹矢は子供の玩具でも、毒を塗るような手数なことをしたのは大人でしょう」