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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

五

「藤助というのを御存じで?」

「よく知っているが、あれは人間の屑だ」

「ヘエ――」

「呑む、打つ、買うの三道楽だ。――福島という人、弱い尻でもなきゃ、あんなイヤな奴を使っているはずはない」

言うことにいちいち棘があります。

「お隣のご主人とは以前から御存じで?」

「左様、懇意ではないが知ってはいる」

これ以上は何を訊いても解りそうはありません。

五

竹光の持主、星野門弥の家はみじめでした。主人の門弥はまだ二十五六の青年武士ですが、散々の貧苦の上、二三年この方の重病で袷の裏まで剥がして売る有様、妹のお雪は二十一二のすぐれた容貌ですが、これも、尾羽打枯らして見る影もありません。

「御病人があるそうで、お気の毒なことですが、――」

平次もこれ以上のことは言い兼ねました。九尺二間の豚小屋にも劣る陋屋に、病人の兄と二人住む妹の美しさ。

「お恥かしゅうございます。兄はこの通りの病気で、この二三日は枕も上がらず――うつらうつらと高熱にうなされて、申すことも判然いたしません」

引っ詰め髪をかき上げて、お雪は泣き濡れておりますが、貧苦にしいたげられながらも、品のよさは蔽うべくもありません。