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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
銭形平次捕物控
一
一
「親分、手紙が参りました」
「どれどれ、これは良い手だ。が、余程急いだと見える」
銭形平次は封を切って読み下しました。初冬の夕陽が這い寄る縁側、今までガラッ八の八五郎を相手に、将棋の詰手を考えている――といった、泰平無事な日だったのです。
「使いの者が待っていますが――」
ガラッ八は膝っ小僧を隠しながら、感に堪えている平次を促しました。
「待てよ、手紙の文面は、――至急相談したいことがあるから、この使いの者と一緒に来て貰いたいと言うのだ。場所は柳橋、名前はない。――言葉は丁寧だが、四角几帳面な文句の様子では、間違いもなく武家だ、――使いの者はどんな男だ」
「女で」
「それじゃお茶屋の女中だろう、――手前行ってみな」
「あっしが行くんですかい」
「お茶屋から岡っ引を呼び付けるような奴のところへは行きたくねえ、第一この左様然らばの文句が気に入らねえよ」
平次は日頃にもなく妙なことを言い出しました。
「あっしも嫌いで、――お茶屋から岡っ引を呼び付けるような野郎は」
ガラッ八は内懐から顎の下へ手を出して、剃り立ての青鬚の跡を、逆様に撫で上げました。
「馬鹿野郎」
「へッ」