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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
「親分、見当はつきましたか」
「…………」
ガラッ八の顔を睨み据えるように、黙って頭を振ります。余計な事を言うなという謎でしょう。
棟梁に礼を言って、今度は御家人竹のところへ――
「今日は。竹兄哥は在家かえ」
「あ、銭形の親分」
磨き抜いた格子の内、柄にもなくとぐろを巻いて草双紙を見ていた子分は、横っ飛びに奥へ取次ぎました。
「これこれ、何を騒ぐ、丁寧にお通し申すんだぞ」
少し武家言葉の残っているのが味噌の御家人の竹、銭形の平次を迎い入れて、念入りすぎるほど念入りな挨拶です。
「ところで竹兄哥。お前さんはヤットウの方は大した腕だというが、あの丁子風呂のお新を殺した下手人は、どのぐらいの使い手だろう。現場も死骸も見たのが幸い、心得のあるお前だから、これは後学のために聴いておきたいんだが――」
平次の問は尤もすぎるほどでした。御家人竹は、しばらく考え深そうに腕を組んで、半眼に眼をつぶって、唸っております。
まだ三十そこそこでしょうが、青髯のある、凄いほどの男前。これが身を持崩さして、腕も家柄も申分のないのが、両刀を捨てて、遊び人の仲間に陥込ませた原因でしょう。