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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
「…………」
「が、松五郎は本当の娘よりもお駒を可愛がっている。それに、昨夜のあの剣幕だ。あれは芝居や掛引で出来ることじゃない」
平次の説明に、ガラッ八と重吉の眼の前には、全く新しい事件の角度が見えて来ました。
「じゃ、誰でしょう、親分」
「こっちへ来て見るがいい」
平次は植木屋の裏口へ行くと、そっと姪のお雪を呼出しました。
「お雪――本当の事を言ってくれ。お駒が生きている時、一番執念深く付き纏ったのは誰だい」
「三十人ぐらいありますよ」
「冗談じゃない」
「大久保小町と言われたお駒さんですもの、町内の独り者は皆んな付け廻したと思っても間違いありません」
「そのうちで、一番うるさくしたのは?」
「お隣の茂七さんかしら?」
「…………」
茂七はあの時新助の側に居たのです、お駒を殺せる道理はありません。
「それとも佐々村さんかしら?」
あの時佐々村佐次郎は、お茶を呑みに母屋へ帰って、遥かの後方に居たはずです。
「変な頼みだが、――この家で使っている鼻紙を一枚貰いたいが」
「お易い御用で」
お雪は笑いながら、懐紙を出してくれました。まことにありきたりの塵紙ですが、新助の死体の下にあった浅草紙とは違います。