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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

五

五

「サア、銭形の親分、もう何もかもお解りだろう。家の者だって、外の者だって、遠慮することはない。縛って引立てておくんなさい」

外から帰って来た平次を見ると、又左衛門はいきり立って、皆んなの後から蹤いて来た嫁のお冬を睨め廻します。

「旦那、まだそこまでは解りません――が、吹矢を射たのは、御新造でないことだけは確かですよ」

「えッ、ど、どうしてそんな事が判ります」

「吹矢筒の口をもう一度見て下さい。付いているのは口紅に相違ないが、それは唇から付いたんじゃありません。唇から付いたんなら、もう少し薄り付きますが、筒の口は紅が笹色になっているほど付いてるでしょう。それは、紅皿から指で筒の口へ捺ったものに相違ありません」

「えッ」

「見たところ、ほんの少しでも、口紅をさしているのは、この家の中では御新造だけだ。誰か悪い奴がそれを知っていて吹矢筒の口へ紅を塗って、庭へ捨てておいたんでしょう。その時すぐ、そこに居た者の指を見りゃ、一ぺんに判ったんだが惜しいことをしましたよ」

「フム――」

銭形平次の明察は、掌を指すようで、又左衛門も承服しないわけにはいきません。

「まだありますよ。