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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

「なるほど」

「ところが土地の者が承知しねえ。いかにも畑は黒木長者のものに相違ないが、地蔵様は昔からここにあったもので、誰が拵えたのか、誰が建立したかわからないはずだ。いかに長者の威勢でも、神様や仏様が儘になるわけはねえと来た」

「それは面白いな」

「少しも面白かあねえ、まるで百姓一揆だ。黒木長者の雇人が二三十人、木刀や手槍まで持出して、地蔵様を屋敷内に移そうとすると、土地の人は、鍬、鎌、竹槍で鎧って、そうはさせねえという騒ぎ。巣鴨はまるで戦場だ、親分、ちょいと行って、何とかしてやっておくんなさい。放っておくと、請合怪我人ぐらいは拵えるぜ」

ガラッ八は一生懸命ですが、平次は一向驚く様子もありません。

「放っておけ放っておけ。そんなカラ騒ぎを見通して、どこかで赤い舌を吐いてる野郎があるに相違ねえ。多分、そんな騒ぎも何かのト書きの一つだろう。もう少し眼鼻が付かなきゃア、手を出そうにも出しようのねえ仕事だ」

煙管を指先で廻して、こんな事をポンポンと言いながらも妙に考え込んでおります。

平次が見透した通り、ガラッ八が報告に駆け付けた後で、黒木長者と、土地の人との間に、漸く妥協案が出来上がりました。