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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
七
「なる――」
「畑の中には、参詣人の踏み荒した足跡に交って、重い物を置いた、四角な跡や、縄の跡などがあるだろう」
「ヘエ――」
「土塀の上もあの通り少し壊れている」
「すると、泥棒は外から入ったんですね」
「そうだよ」
「藤三郎とお仙は?」
「それが俺をすっかり迷わせたんだ。泥棒は千両箱二つ盗って逃げた後へ、逢引か何かの都合で、藤三郎とお仙が来たんだね。月明かりで見ると、土蔵に穴が明いている。中には千両箱が杉なりに積んである。泥棒に罪をなすり付けて一と箱せしめるには、こんな都合の好いことは滅多にない。藤三郎は武家出だというから、そんな仕事にかけては胆もすわっているだろう」
「見ていたようだね、親分」
「まア、そうでも考えなきゃア、テニハが合わねえ。藤三郎とお仙は、泥棒のおあまりを頂戴して、いずれはここから飛出す時の用意にしたんだろうよ」
「すると、外から入って、二千両盗った泥棒は誰でしょう」
「待ちなよ八、それも追って解る」
平次は顔を挙げて、その辺の地勢から、巣鴨の通りのささやかな家並に眼を移しました。
七
「この辺に湯屋があるだろうな」
「ありますよ、その畑の中の道を抜けて、広い道に出ようという角が、村の湯屋になってますよ」