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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

は、大した狭い家でもないのに、居間や書斎を空っぽにして、わざわざ六つかしく厳めしい本を玄関に積み重ね、来訪の学生や新聞記者の胆を奪ったという学者もある。

もっとも我々文士の中には、必要以上の本を求める篤志家などはほとんどなく、ひどいのになると、ろくな参考書を持っていないばかりでなく、辞書一冊持っていないのを、かえって自慢の種にしているつむじ曲りもあるようである。「調べる」ことを自慢の一つにした時代に、俺は万年筆と原稿紙さえあれば、仕事をしてみせるという、痩せ我慢であったのかもしれない。

ところで、これは非常に長くフランスにいた人の話であるが、巴里あたりの良い家庭の客間や広間には、古典の文学書がギッシリ並べられ、その装禎の美しさを競っているが、その著書は、コルネーユ、ラシーヌ、モリエールから精々、バルザックや、ユーゴーあたりまでで、フローベルやモーパッサンはともかく、大デュマなどは姿も見せないということである。この話は戦前に聴いたことで、近頃はまた変わっているのかもしれないが、ともかく、どこの国でも、中流以上の家庭の主婦達はかなり見栄坊であることは疑いもない。