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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

「その聟、というのは?」

「沢山ございますよ。周助さんも、手代の文治も、従兄の仲吉さんも、皆んななりたい口で――、へッへッ、でも持参がなきゃあ、主人は承知しません。本銀町の小金井様の御次男が御執心で、一と箱ぐらいは持って来てもと言う口吻ですから、いずれそんなところへ落着くところだったのでしょう。へッ、へッ」

妙なところへ、卑屈な世辞笑いの伴奏が入ります。

「ところで、主人を怨んでいる者はないだろうか、火ぐらいは放け兼ねないという――」

「そりゃありますとも。――一番怨んでいるのは、お神さんの兄さんで、本当ならこの家を継ぐはずだった市五郎さん。これは、賭博癖が好きで久離切られ、三河町で器用から思いついた、細工物をしております。もう五十になっても、があがらないのですから、自分の生れた三村屋が恋しくもなるでしょう」

番頭伊助の舌は、思いの外深刻に動きます。

「それから」

「その次に怨んでいるのは、聟七人の口で」

「聟七人とはなんだ」

「聟八人のうち、一人が望みを遂げると、あと七人はあぶれるわけでございます」

「なるほどね」

「あぶれのうちでも、可哀想なのは、市五郎さんの倅、お町さんには従兄に当る仲吉さんで。