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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
二人はの後ろへ廻ると、木戸を押し開けて、植木屋松五郎の庭に飛込みました。が、
「あッ」
たった一と目で、そこに釘付けにされたのも無理はありません。松五郎の娘お駒、山の手一番と言われた十九の艶姿が、無慙大地の上に仰向けに倒れて、玉を延べたように美しい喉笛、少し左寄りの方へ、矢文を結んだままの矢が、箆深く突っ立っていたのです。
「どうしたどうした」
生垣を一と跳びに、後ろから飛んで来たのは佐々村佐次郎――。あまりの虐たらしさに、ハッと息を呑みました。三人の眼玉が飛出さなかったのが不思議なくらいです。
「お駒――」
「確りしておくれ」
お駒を抱き上げたのは母親のお辰と、客分で置いた親類の娘お雪の二人でした。
「誰がこんな事をしたんだえ、お駒」
お駒の白い首筋を染めて、襟元へ溜った血が、母親の胸へ膝へと溢れかかります。
「茂七、外科を呼んで来い」
一番先に理性を取戻したのは、さすがに浪人者の佐次郎でした。
「お駒、――確りしておくれ、――死んじゃいけないよ、――お駒」
半狂乱になった母親、膝の上へ抱き上げたお駒の、次第に頼み少なくなるのを見ると、犇々と抱きしめながら、自分の身体と一緒に揺すぶりました。