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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(三)酒屋火事
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens
平次は遠慮会釈もなく、冷たくまくし立てます。
「親分さん、待って下さい。これを申上げると、仲吉さんの心づかいも無駄になり、三村屋の暖簾は二度と掛けられないことになりますが――」
お町は首を挙げました。少し青白い、品の良い顔が、絞木に掛けられたように引釣って、真珠色の涙が、ポロポロと頬を洗います。
「ね、お町さん、暖簾が大事か、人の命が大事か、恋が大事か、義理が大事か。――岡っ引の私には解らねえ。ここはお前の思案に任せようじゃないか」
「親分さん」
「酒屋を三軒焼いた罪は大きい。江戸中の憎しみのかかっている仲吉は、間違いもなく引廻しのうえ火焙りだ。――本人も覚悟をしたと見えて、白状してしまったそうだから、八日と十三日と十八日の晩、酉刻半(七時)から子刻(十二時)前まで、どこに居たか証人を立てて申上げなきゃ、まず助かる見込みはあるまいよ」
「親分さん、みんな申上げます。――丸焼けになった上に、小金井様の千両が入らないとなれば、三村屋は潰れるに決っておりますが、仲吉さんが火焙りになるのを、私は黙って見てはいられません」
「…………」
「八日と十三日と十八日の晩――。