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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

七

平次は尻尾を巻きました。完全な敗北です。

七

「親分、首尾は」

ガラッ八は先に帰って待っておりました。

「さんざんの体だ。どう考えても吉五郎と長次郎は下手人じゃねえ。二人とも申分のない良い男だ」

「すると番頭?」

「それも主人殺しをするほどの男ではなさそうだ」

「じゃやはり吉五郎か、長次郎じゃありませんか」

「吉五郎には殺すわけがなかった。お辰と徳力屋の身代は、後でひょっこり吉五郎に飛込んで来た代物だ――長次郎は正直一徹の男さ。万一身に覚えがあるなら、あれだけ脅かされた上、千之助が生き還ったと聞けば、お新を返すと言うだろう」

「すると人相の方ではうまく行かなかったわけで、――」

名御用聞とその名物助手は、途方に暮れた顔を合せました。

「三人とも潔白だとすると、あとはたった二つしか考えようがない」

「二つと言うと?」

「一つは、千之助は人に突き落されたと思っただけで、実は風に吹飛ばされ、怪我をして気を喪ってそんな夢を見たのではないかということだ」

「…………」

「もう一つは、あれは真実の千之助ではなくて、とんだ天一坊ではあるまいかということだ」

「ヘエ――」

「千之助の死骸の揚がらないのを付け目に、稲葉屋佐七が細工をして、あんな顔の潰れた男を探し出し、徳力屋を乗取って山分けにするか、それが及ばなきゃ、脅かしてうんと取込む術もある」