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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(三)酒屋火事

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(三)酒屋火事 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 146,725 characters · 298 screens

Aozora Bunko

平次はそんな事を言ってしばらくの暇乞いをしました。見ると軽い旅装束、片瀬、江の島へ行くと言うのも満更の嘘とは思えません。往来まで送って出た佐七。

「親分、変なことがあるんですが――」

と四方を見廻します。

「知ってるよ稲葉屋さん。あの男は千之助でないかも知れないという疑いだろう」

平次は先を潜りました。

「どうして、そんな事を?」

「殺した者がなきゃ、あの男が偽者に決っているじゃありませんか――私は片瀬江の島へかけて、もう一度、あの時の死骸も捜す積りですよ」

そのまま、品川の方へ急ぐ平次、佐七は二の句も継げずに見送りました。

翌る日の晩。横山町の徳力屋――一年前の自分の家のあたりを、ブラブラ見て歩いた千之助。妙に物懐かしい心持になって、夜更けの町をトボトボと帰って来ると、

「野郎ッ、気を付けろ」

いきなり疾風のごとく飛んで来て、正面からドシンと突き当ったものがあります。

「あッ」

犬っころのように投り出された千之助、漸く起上がろうとすると、後ろから喉笛へサッと投げかけた縄。

「…………」

物をも言わず悶絶する千之助を、三人の荒くれ男が、引っ攫って肩に引っ担ぎました。