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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
人を一人殺して、面喰らったためだろうと思われます。
平次は一応家の内外を調べた上、いよいよ自分の考えを確かめたらしく、主人の佐吉に何やら耳打ちをして、誰を縛るでもなく、懐手のまま神田へ帰ってしまいました。
それから三日目の朝、越後屋の佐吉は、蒼くなって、平次のところへやって来ました。
「親分、昨夜もやって来ましたよ」
「えッ」
「与次郎が縛られたから、それでいいのかと思うと、あれは三輪の親分の見当違いでしたね」
「どうなすったんだ。詳しく話してみなさるがいい」
平次も思わず膝を乗り出します。
「こうなんです、――女房の葬いを済ませて、やれやれと思うと、また雪でしょう。お駒に一本つけさして長火鉢の前でチビチビやっていると、かれこれ亥刻過ぎだったでしょう。庭の雨戸を、またトン、トン、トンと叩く者があるのです」
「…………」
平次も、側で聞いているガラッ八も、思わず、ぞっとしました。
「しばらく黙っていると、女のか細い声で、――ちょいと開けて下さい――と言ったようですが、なにぶんあの騒ぎの後でしょう、頭から水をブッかけられたようになって、恥ずかしい話ですが動くことも出来ません。