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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
三
平次は相変らず子分思いの癖にポンポン言います。
「ところで、親分」
「何だ、まだ言い遺すことがあるのか」
「三輪の万七親分の鼻を明かしても構わないでしょうね」
ガラッ八は少し顎を突き出して、長い舌でペロリと上唇を嘗めました。
「馬鹿野郎、撲り倒されない用心をしろ、旦那が笑っていらっしゃるじゃないか」
「へッ、へッ、それじゃ行って参ります」
ガラッ八は笹野新三郎の前を滑ると、八丁堀から谷中まで、尻をからげて宙を飛びます。
三
「おや八兄哥、大層好い鼻じゃないか」
三輪の万七とその子分のお神楽の清吉、朝っから調べ疲れて、見当もつかずにいるところへ八五郎を迎えて、苦々しいとは思いながらも、何となくホッとした様子です。
「三輪の親分、当りはつきましたかい」
「いや、まだついたというほどではねえ」
「笹野の旦那が――寺社御奉行のお頼みだから、三輪のも精いっぱいの働きを見せるだろう、やい八五郎、鼻毛なんぞ抜いてる暇があるなら、谷中へ行って万七親分の仕事振りを見習って来い、好い修業になるぞッ――ってね、へッへッ」
八五郎にしては一世一代のお世辞です、もっとも八丁堀から谷中まで考えて来たんで、これくらいの事が言えたのでしょう。