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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
八
又六の顔は、涙と汗に塗れて、山椒魚のように醜く光ります。
「さア解らねえ、――下手人は誰でしょう、親分」
ガラッ八はキナ臭い鼻を向けました。
「お留でなきゃ――縁結びの仲間にされた八五郎だろうよ」
「冗談でしょう、親分」
八五郎は大面喰らいです。
八
「銭形の」
「おや、大根畠の兄哥か、吉五郎はどうしたえ」
銭形平次は、明神様の裏で、ハタと金太に逢いました。その日の夕刻です。
「吉五郎は日暮れ前に家へ帰されるはずだよ、――証拠の小刀が傷口に合わないのは、お役人方も承知だ。あれじゃお奉行所へ送るわけにいかねえ」
「そうか、――そいつは大変だ、吉五郎が帰る前に、少し当っておきたいことがあるんだが――」
「目星でも付いたのかい」
「まアそんなところだ、金太兄哥も一緒に来て見るがいい」
平次の自信あり気な態度は、金太とガラッ八をすっかり征服しました。
行く先は大工の吉五郎の留守宅。
「御免よ」
「あッ、親分さん方」
入口に迎えたお留は、すっかり顛倒しております。
「吉五郎はまだ帰らないかい」
「え」
「少し邪魔をするよ。さア、金太兄哥も八も入るんだ」
平次は無遠慮に娘一人の家へ入ると、日頃のよいたしなみもかなぐり捨てて、四方をキョロキョロ眺めております。