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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
今日もこれから川越屋へ行くところでございましたよ」
百松の一徹な顔には、炎のような執心が、メラメラと燃えるようにさえ思えるのです。
「ちょうどいい塩梅だ。一緒に行ってみよう」
「親分さんも」
「そうだよ。音次郎だって、木や石じゃあるめえ。この俺からも口を添えて、娘のありかを訊いてやろう」
「有難うございます。それでは親分さん」
平次とガラッ八は、百松を先に立てて、そこからはほんの一丁場の八軒町に向いました。
が、平次もガラッ八も、あまり、神経の鋭くないらしい百松も、八軒町に入って、次第に不思議な空気を感じました。
「おや? 変じゃないか、八」
「川越屋には忌中の札が出てますよ、親分」
「…………」
百松は何にも言わずに、ゴクリと固唾を呑みます。
店は半分鎖したまま、ガラクタ物の古道具が少々、その奥の方には、それでも二三人の男女が、若い娘を囲んで、しめやかに話している様子でした。
「取込みのところを気の毒だが、主人の音次郎が居るだろうか」
平次はその中へ、権柄らしい顔もせずに入って行きました。
「あ、銭形の親分、――主人は亡くなりましたよ」
立って来たのは、町内の庵室に行い済ましている蓼斎居士という、発句も詠めば、経も読むといった法体の中年男でした。