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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
「それは大変だ、心当りは探したろうな」
草履を突っかけながら、平次。
「お友達の家は申すに及ばず、御近所から、親類方を残らず訊きました」
「いつから見えないんだえ」
「昨夜、――夕方から宵のうちでございます。寝かし付けようと思うと、どこにも見えなかったので、大騒ぎになりました」
「晩飯は?」
「頂かせました」
「平常着のままだね」
「え」
「坊っちゃんが一番嫌っているのは誰だい」
平次は妙な事を訊きます。
「金之丞さんでございます。あの方は外へ出ると土産を山ほど買って来て御機嫌を取りますが、どうしてもなついてくれません、――商人もたしなみだからと言って、仕舞などを教えようとなさるからでしょう」
「そんな事もあるだろうな、――ところで、一番坊っちゃんのなついているのは?」
「私でございます」
お里は、誇らしい顔をあげました。厄そこそこの年配でしょうが、苦労をしたせいか、美しいうちにも、何となく凜々しいところのある娘です。
「それは間違いもあるまい、その次は」
「さア――」
お里は言い淀みました。
「遠州屋から退転した六郎のところを捜したろうな」
「それが、行方がよくわかりません」