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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(八)お珊文身調べ (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 143,455 characters · 290 screens
「あの、お里とお冬でした」
「奉公人だね」
「え」
「時刻は?」
「戌刻前でした」
それが悪い事か――といった、誇らかな色が、静かにあげた娘の顔を厳いものにします。
「縁結びは細工をしたものだそうだね、お前と丹次と、お留と八五郎と、お柳と又六と組合せるように――」
「…………」
お糸の大きい島田がガックリ下がりました。嘘をつくことには馴れていない様子ですが、その代り問い詰められた口惜し涙が、ホロホロと膝に落ちます。
「そんな事は、親分さん」
助け船を出す治兵衛。
「昨夜はどこへも出ないだろうな」
「それはもう親分、娘は日の暮れた街を見たこともありません。私も早寝が自慢で」
そう言う治兵衛の言葉には、かなりの誇張がありそうです。
「大工の吉五郎は、大層有馬屋を怨んでいるようだが、ありゃどういうわけだい」
平次はガラリと話題を変えました。
「心得違いですよ。請負仕事に損をしたからって、私を怨む筋はありません。その上貸した金を取立てて文句を言われちゃ、商人は商売が出来ません。それから丹次が一度や二度自分の娘へ甘い言葉をかけたからって、私どもまで怨まれる道理はないじゃありませんか、ね、親分」