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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens

Aozora Bunko

源次が谷中で殺された晩の助十郎、平馬、周吉などの動きを調べるつもりでしたが、これは平次の大縮尻でした。武家屋敷の奉公人は口が堅い上、実際庭口から裏門へそっと出入りするなどは、お勝手元の住人たちが知っているはずもなかったのです。

あっちこっち無駄足をして、がっかりして帰ろうとすると、

「親分、――銭形の親分さん」

後ろからそっと呼止める者があります。妻恋坂の淋しい道には、四方に聴いている人もありません。

「お前さんは?」

「庄司様の庭男でございます。友吉と申しますんで」

六十近い大きな老爺ですが、頑丈そうな腰を二つに折って、ひどく物に脅えている様子です。

「友吉と言いなさるのかい、用事は?」

平次は期待に息を呑みます。

「私がこんなことを申上げると、後の祟りが怖ろしゅうございますが、あんまりなことで、見るに見兼ねました」

「話してくれ、みんな御主人のためになることだから」

平次は友吉を促しながら、妻恋稲荷の前に跼みました。

「若様がお組と夜逃げをしたなんて、あれは大嘘でございます。お組は源次の野郎が誘い出しましたが、若様は、お気の毒なことに――」

「林太郎様はどうした」