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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
平次は辞を尽して一生懸命頼みましたが、主人石崎平馬は所用と言って、逢ってもくれません。奉公人たちにそっと訊くと、庄司家の若様林太郎が行方知れずになった時は、主人平馬もお嬢さんのお礼も、さすがに驚いた様子でしたが、親類たちの口入れと、庄司右京の望みで、養子助十郎へそのままお礼を嫁にと懇望されると、一議に及ばず、渡りに舟で応じ、それっきり林太郎のことは忘れてしまって、行方を捜す様子もないことが判りました。
家と家との縁組以外、この人達は何にも考えていなかったのでしょう。林太郎が執心した美しいお礼も、結局は千三百五十石に嫁入りする気持しかなかったのかと思うと、平次も何かうら淋しい心持になります。
「親分、どうでした」
門の外に、八五郎は立てつづけに欠伸ばかりして待っていました。
「呆れて物が言えないよ、この上は今日中に、――遅くとも明日の夕方までに林太郎様を捜し出すんだ」
「お組は? 親分」
「それほど娘の方が気になるなら、お前は三河島のお組の親許へ行ってくれ。俺は養子の助十郎と、庄司一家の者の出入りをもう少し突き止めてみる」
「それじゃ親分」
「晩に逢おう」
銭形平次はこうして、とんでもない武家のお家騒動の渦中に飛込んでしまったのです。