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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(十二)狐の嫁入 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,230 characters · 280 screens
三
やら火を消してしまって、平次と八五郎は、掛り同心永村長十郎、土地の御用聞三河島の浅吉等と一緒に、焼跡の護摩壇に検屍の足を踏込んだのです。
その時、群衆はもう大方散って、残るのは東海坊の弟子たちと、世話人数名と、火を消すのに手伝った、丈夫な男たちが二三十人だけ。暮色は四方をこめて、燃え残る薪があちこちに煙をあげております。
三
「あッ、人が――」
真っ先に壇の上に飛上がった三河島の浅吉は立ち縮みました。
「東海坊じゃないか」
永村長十郎が続きます。
「火伏せの修験者が焼け死んだぜ、親分。こいつア――」
「馬鹿ッ」
平次に睨まれて、ガラッ八は危うく口を緘しました。放っておいたら――こいつア大笑いだ――とでも言ったことでしょう。
「法力が足りなかったんだ、可哀想に」
年配者の浅吉は、東海坊に同情を持っている様子です。
四方に暮色が迫ったので、提灯を呼びました。そうでもしなければ、半分焼けた壇は、足許が危なくて、うっかり歩けません。枯柴の火は大方消えて、壇を取巻く数十の好奇の眼は、なかなか立去りそうもなく、固唾を呑んでことの成行きを見ております。
「法力なんてものは、最初からなかったんだよ、兄哥」