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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
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重兵衛 はは、どうした、どうした。
太吉 (父に縋り付く。)怖いよう。
重兵衛 なにが怖いのだと云うのに……。おとっさんはここにいるから大丈夫だ。(笑いながら叱る。)弱虫め。しっかりしろ。
太吉 でも、なんだか怖いよ。おとっさん。
重兵衛 なにを云やあがるんだ、馬鹿野郎……。(声がやや暴くなる。)そんな弱虫で、おとっさんと一緒にここにいられるか。あしたはもう家へ追いかえして仕舞うから、そう思え。いいか。
(太吉はだまっている。)
重兵衛 それだから家にいろと云うのに、お父さんと一緒ならさびしくねえと云って、無理にここへ附いて来たんじゃあねえか。お父さんは年中この山の中の一軒家に住んでいるが、唯の一度だって怖いと思った事なんぞありゃあしねえ。(云いかけて肩をすくめる。)ああ、夜になったら薄ら寒くなって来た。さあ、おまえも火のそばへ来て、よく暖まって寝ろ。怖いのじゃあねえ、寒いのだ。よく暖まって、好い心持にぐっすり寝ろ。
(太吉はやはり無言で炉の前に来る。重兵衛は更に枯枝をくべる。梟の声。)
太吉 (怖ろしそうに耳を傾ける。)お父さん。あれ、あんな声が……。