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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
重兵衛 あれは梟だ。梟が啼くのだ。めずらしくもねえ。(笑う。)おまえは今夜、どうかしているな。
(二人は向い合って焚火にあたっている。薄く山風の音。小唄の声遠く聞ゆ。)
惚れて通うに何怖かろう。
(太吉は俄に立上りて、再び父に取縋る。)
太吉 怖いよう。おとっさん。
重兵衛 また始めやあがった。意気地無しめ。いよいよあしたは家へ帰してしまうぞ。
太吉 (恐怖の眼を表へ向けて。)あれ、来たよ、来たよ。
※(歌記号、1-3-28)今宵も逢おうと、闇の夜道を唯ひとり。
重兵衛 成ほど、だれか歌いながら来るようだ。聞き慣れねえ声だから、ここらの若え者じゃあるめえ。旅の人でも迷って来たかな。
※(歌記号、1-3-28)先や左程にも思やせぬのに、こちゃ登りつめ、山を越えて逢いにゆく。
(重兵衛は唄を聴いている。太吉は顫えながら父に獅噛み付いている。やがて重兵衛は立って、下のかたの窓から覗く。)
重兵衛 ああ。こっちへ来た、来た。
太吉 怖いよう。
(太吉はもう堪らなくなって奥へ逃げ込み、一生懸命に障子をがたがたと閉める。重兵衛は表をながめている。