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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens

Aozora Bunko

おつや (太吉に。)さあ、お客さまにお休みなさいをしておいでよ。

(おつやは太吉の手を取って、旅人の前へ引出そうとすれば、太吉は顫えておつやに縋りつく。)

太吉  怖いよう。

おつや なにが怖いんだよ。意気地無しだねえ。

重兵衛 (客の手前、気の毒になって。)ええ、もう好いから早く連れて行け、連れて行け。

おつや さあ、お出で、お出で……。

(おつやは太吉を引立てて、上のかたの障子の中に入る。山風の音。)

旅人  (ひとり言のように。)風が出て来た。

重兵衛 おお、窓から風が這入る……。道理で、さっきから薄ら寒いと思った。

(重兵衛は立って、下のかたの窓を閉めようとする時、一としきり強い山風の音。ランプの火が消える。)

重兵衛 (窓をしめながら。)ああ、いけねえ。灯を消されてしまった。

おつや (障子の中にて。)あら、ランプが消えたの。

(土間は暗く、焚火の光もやや薄くなる。山風の音。その薄暗い中で、おつやは障子をあけて出かかりしが、俄にぞっとしたように、框に腰をおろしたまま暫く無言。重兵衛は再びランプを点せば、土間は明るくなる。)

重兵衛 (炉の前に戻る。