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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
Read 飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選 (ひだのかいだん) by 岡本 綺堂 (おかもときどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 130,271 characters · 263 screens
)ここらの癖で、ときどきに強い山風が吹き出して来るのですが、又すぐに止みますよ。(炉に枝をくべる。)併し風が出ると寒くなります。馴れない方はかぜを引かないように気をつけて下さい。
旅人 (肩をすくめる。)まったく寒くなりましたね。
重兵衛 (酒を把る。)どうです、寒さ凌ぎに……。
旅人 いや、わたしは……。(頭をふる。)あなた、みんな飲んでください。
重兵衛 そうですか。お客様をそっち退けにして、こっちばかりが勝手に飲んだり食ったり……。はは、どうも済みません。(手酌で飲む。)
(このあいだに、おつやは何か思案し、そっと正面の出入口のかたへ行く。)
おつや (小声で。)おじさん。
重兵衛 なんだ。
おつや (入口の戸をあけながら。)ちょいと……。
(重兵衛をよび出して、おつやは逃げるように小屋の外へ出る。重兵衛も出て、下のかたへ行く。舞台は半廻しになりて、小屋の外。月のひかりに照されたおつやの顔、今までとは別人のように蒼ざめている。)
重兵衛 わざわざ表へ呼び出して、なんの用だ。
(おつやは内を指さして囁けば、重兵衛は笑い出す。)
重兵衛 はは、ばかを云え。