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たんげさぜん
丹下左膳
林 不忘
Read 丹下左膳 (たんげさぜん) by 林 不忘 (はやしふぼう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 196,229 characters · 389 screens
何もはいっていない。
もとより、煙も出ない。
拍子抜けのした玉手箱……吉宗公は壺をひっくりかえして、底をポンポンとおたたきになっては、首をかしげてしきりに音を聞いてらっしゃる。縁日で桶を買うようなかっこうだ。底が二重になっているかどうか、それをあらためているのです。
越前守と愚楽は、笑いの眼をかわしたのち、愚楽が、
「どうです、上様。底に種仕掛けはございますまい」
「イヤ、これは降参いたした」
吉宗はそう言って、壺を畳へ置きなおし、
「この壺に秘図が入っておらんとなると、柳生の埋宝それ自身がちとあやしい話じゃな」
「そう……かもしれません」
「かもしれんではないぞ、愚楽。柳生はああいう武弁一方の貧乏藩じゃが、先祖の隠した大金がある。それをそのままにしておいては危険じゃから、日光を当てて吐き出させてしまえ――と、余に向かってそう進言したのは、愚楽、其方ではないか」
「ヘエ、上様のおっしゃるとおりで」
「ヘエではないぞ。それで、ああして柳生の金魚を死なしたのじゃが、日光をふり当てられた柳生では、一風とやら申す茶師の言を頼りに、それ以来、死にもの狂いでこれなるこけ猿の壺の行方をさがし求めてきた……これ、その壺をいまあけてみれば、ただ空気がはいっているだけとは、愚楽、これはすべて貴様の責任だぞ」