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なんごくたいへいき
南国太平記
直木 三十五
Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens
「何を、お考え? 後悔なさいましたのでは、ござりませぬか」
「何が、後悔?」
「妾とのことを――」
「後悔か――」
百城は、じっと、綱手を見た。そして
「綱手、如何なることがあろうと、後悔するな。人間の致す程のことに後悔するような悪はない。なしたいことをなす。それでよい。なしたいことに、悪はない。悪と感じても、押切れば救われる」
綱手は、黙っていた。
「綱手と申す女は、その方か?」
調所に代った新任の大阪の留守居役、中島兵太夫が、眼鏡越しに、綱手を見て、老人らしい、人のいい笑顔をした。そして、火鉢へ、片肱をついて、片手に、火箸をいじりながら
「昨日、堺町人の、浜村と申すのが、参っての――」
綱手は、心臓を、握りつぶされたように感じた。いつか、調所のいった、浜村孫兵衛との縁談が、その場かぎりの話でなく、あんなに軽い戯談のような口振で、話しておきながら、もう、先方へ、通じてあったか、と思うと、自分の行末を案じてくれた調所の親切が、憎く、悲しくなって来た。
「調所殿より、お話のあった、お前との、縁談、如何でございましょうかと、浜村め、申して参った。わしは、来て早々、何も存ぜぬから、奥役に聞くと、確かに、使したと、申しておるが――存じてもおろう、調所殿の急死――大は、御当家を起したことから、小は、お前達の身の上までも、案じて