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なんごくたいへいき

南国太平記

直木 三十五

Read 南国太平記 (なんごくたいへいき) by 直木 三十五 (なおきさんじゅうご) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 493,291 characters · 991 screens

Aozora Bunko

三人は、裏木戸を出た。

小太郎は、南玉の後から

(こんな汚いところに――)

と、思いながら、益満の住んでいる、陽当りの悪い、古い、臭のする長屋へ入って行った。南玉が

「今晩は」

と、いうと

「誰だっ」

聞いたことのない、侍らしい声がした。だが、すぐ

「おお」

と、益満が云った。土間へ入ると、障子が開いて、益満が立っていた。小太郎を見ると

「よう」

小太郎は、それへ笑って

「客?」

と、奥を、顎でさした。

「構わぬ。引合せよう」

行燈と、燭台とを置いて、二人の浪人者らしいのが、振向いた。南玉は、上り口の間から

「ええ」

と、云って、敷居際へ、手をついた。

「入れ。親爺――これが、桃牛舎南玉。これが、仙波小太郎」

お互に、挨拶が終ると

「よく無事だったのう。八郎太殿の話は、京で聞いた。天晴れだ、という話であった。わしは、二日おくれて、叡山へついた」

こう、軽く云って、益満は、小太郎の顔をじっと見た。

「益満――綱手も――」

「南玉から聞いた。悲しいか?」

「悲しいか? とは?」

生死さえ判らなくなった自分が、こうして戻って来たのに、余りに、軽く、冷たそうな益満の態度に

「骨肉の情でないか」